読書録(2024年4月)

就職して一年が経ち、労働と読書のバランスがとれるようになってきて、今月は読書録をつけるくらいの量を読むことができました。

昨年は、読みたい本をたくさん積んでるのに力尽きて読めない・でも読みたい本はどんどん発売されて積読はチョモランマ化していくループにはまっていました。 すごくストレスでしたが、自分にとって読書は好きなことではなく必要なことなんだなと再確認できたのはよかったのかもしれません。

自分の感想を文章にするのは、難しくて楽しい時間でした。これからは毎月記録しよう。

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垣根涼介『室町無頼 上・下』新潮文庫

好きな某芸能人が才蔵くん(主人公のふたりに拾われる少年)を演じるので予習として。室町末期が舞台なのに現代のお話を読んでいるような、学ぶことがたくさんある物語。

端正な文章と、「ここってどうだっけ?」と疑問が浮かんだ部分ではしっかり解説が入る絶妙さで、時代小説ビギナーでもぐんぐん読めた。

この作品は約半分が才蔵くんの修行パート。読んでる方もゾッとするくらい過酷な修行で、才蔵くんが心身ともに成長する過程を丁寧に描写している。映画ではお師匠役が柄本明なのです。確実にかっこいいので今から楽しみ。

情景描写も登場人物の心理描写も丁寧で、脳内で映像化は言うまでもなく、においや温度湿度まで浮かぶ。丁寧で至れり尽くせりな読書体験でした。

 

津田直美『セーターになりたかった毛糸玉』ブロンズ新社

昔図書館にあって大好きで当時は版切れしていたのにしれっと復刊していた!

津田直美の、緻密な書き込みとふんわりしたあたたかみが両立された画風が大好き。動物の毛のふわふわと、毛糸のふわふわが明確に違うのです。

お話も人情味があって素敵。「役に立ちたい」という気持ちとの向き合い方、自己実現とはなにか、大人になって読んでも考えさせられるなー。

子どもの頃好きだった本が今見ても素晴らしいと嬉しいですね。

クリスマスのプレゼントにおすすめです。

 

山内マリコ『あの子は貴族』集英社文庫

東京生まれ東京育ちのお嬢様華子と、地方から慶應大学に進学して死に物狂いで東京に居場所を見つける美紀。美紀の人生は壮絶で読んでるのも辛いくらいだったけれど、華子の住む世界の狭さも地獄だよなー。女の敵は女ねハイハイと思いながら読んでたので、そこ協力するんだ!と嬉しい裏切りがありました。シスターフッド大好き。

つくづく、東京って地方民の幻想でできているんだなぁと思いました。

個人的にいちばん印象に残っているのは、華子が関西人男性とはじめて対面して、関西弁に面食らって体調を崩すシーン。関西人なのでかなりカルチャーショックでした。(彼はずけずけとした人だったけど、そこまでか?)

 

彬子女王『赤と青のガウン』PHP文庫

皇族の日常を知る機会などないので、護衛官との関係などが興味深かったです。大英博物館の裏側・海外で研究をする悲喜こもごもをユーモアあふれる文章で綴られていておもしろかった。

「誰にこうしてもらって、とても助かった/ありがたかった」とよく書いていらっしゃって、女王のそのようなお人柄ゆえの出会いだろうなと自分を省みました。

 

津村記久子『水車小屋のネネ』毎日新聞出版

読んだ後、じんわりとあぁいいものを読んだなぁという気持ちがずっと続く。静かで、淡々としていて、少々シビアだけど、優しい小説。

 人は、寄りかかる肩があることでひとりで立つことができるんだなと感じました。登場人物の何名かはかなり辛い経験をしているのですが、安易にスカッとやり返して終われないのがリアルでよかったです。

書けば書くほど陳腐になるのがもどかしい。本当にいい小説で、老若男女問わず薦めたい!

年齢を重ねてからもう一度読むと今とまったく違う感想になるだろうし、もし小学生の頃に読んでいたら今の私がすんなり流した部分に感銘を受けたりすると思う。

10年後の書店で平積みされている姿や、夏の文庫フェアの常連になっている様子が見える。愛され続ける小説になる予感がします。

 

宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』『成瀬は信じた道をいく』新潮社

正直、読み始めてすぐは(おもしろいし楽しいけどそこまでか…?)と感じたけど、どんどんギアがかかったようにおもしろくなっていきます。

成瀬みたいな主人公っていそうでいない。生真面目で、なんでもできて、突拍子もないことを考えつくけど、他人の迷惑になるラインを考えることができるし、情緒が豊かで、内省できる。しかも女子だし。もっとこういう女子の小説が読みたいよ。

にっしゃんみたいな男子高校生キャラも珍しい。成瀬とにっしゃんは性別を入れ替えると途端にありふれたカップルになるので『成瀬〜』がたくさん賞を取った理由はこういう部分だと思う。

 登場人物がみんな一生懸命でチャーミングで魅力的。成瀬は一風変わったイカす主人公ですが、そんな成瀬を変わり者だと思ってる周りの人物も幼馴染の島崎を筆頭に十分変わってる。多分私もどこかしら変で、人類総変人なのだ。

人間って、面白ーー!と思える小説です。中高生に読んでほしい。

ドラマ化してほしいけど、成瀬役がぜんぜん浮かばない。いっそのこと大々的にオーディションするとか?