「見立て」の世界へ! 田中達也『おすしがふくをかいにきた』

 

今週のお題「最近おもしろかった本」

こんにちは、みずなすです。

私は絵本が大好きです。絵本にはいつ見ても心躍る素晴らしさがあります。『ぐりとぐら』のカステラとか『ぐるんぱのようちえん』のビスケットとか『こんとあき』の駅弁とか…食べ物ばかりだな。

絵本というのは「子どもの本」ではなくて、ひとつの「ジャンル」です。児童書もしかり。そもそも本には売る側が想定するターゲット層こそあれど、対象年齢は存在しないというのが私の考えです。だから50歳が『かいけつゾロリ』を読んだっていいし、7歳が村上春樹を呼んだっていいんです!読書は自由だ!!みんな好きな本を読もう!!

田中達也『おすしがふくをかいにきた』白泉社

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そんな私が最近読んでとても良かったのが、田中達也さんの絵本『おすしがふくをかいにきた』です。

世界中で大人気のミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんは、日常にあるものを別のものに「見立て」た写真を、2011年から毎日(!)InstagramTwitterにアップされています。

最近の作品で私がとくに好きだったのは、ムーミンハウス。綿棒でムーミンの世界を表現できるなんて、田中さんのアイデアには感動するばかり…

『おすしがふくをかいにきた』は、おすしやアイスやいちごがいろいろなお店にお買い物に行くお話。田中さんの作品には普段登場しない食べ物キャラが可愛くて、全体的にポップな印象の絵本。

店内も商品も「見立て」がふんだんに使われていて、「次はなにがくるんだろう?」と予想するのが楽しい!オチも秀逸。あの人があんなところにいたり、すみっこでは別のストーリーが繰り広げられていたり、読むたびに新しい発見があります。ひとりで楽しむもよし、友達や親子で楽しむもよし、幅広い年齢が楽しめる絵本です。

 

田中達也『くみたて』福音館書店

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こちらは田中さんの第1作目の絵本。

まず、タイトルがいい。「見立て」という言葉を「くみたて」という言葉に見立てている。田中さんの作品にはすべてダジャレに絡めた名前がつけられるのですが、はじめての絵本とあって田中さんの作品っぽさが全面に出ていますね。

絵本出版の老舗・福音館らしい格調の高い内容で、いろんなものがどんどん組み立てられて、予想の斜め上をいく姿になっていくのが小気味良い。大きめの絵本なので、ひとりで読むよりは大人数の読み聞かせなどすこし離れた場所から見たほうが全体を把握できてわかりやすそう。

いま写真を見て気づいたのですが、田中さんのインスタ、2作目が出版されるまでのあいだにフォロワー10万人も増えたんですね…すごい…(1作目が6月、2作目が先日発売だったのでその間約4ヶ月)

 

【おまけ】銀色夏生『かわいいものの本』角川文庫

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これは最近というか、人生でいちばん大切な本。小さいころ図書館で借りては返しをくりかえしていたら、母が古本屋で見つけてきてくれた思い出があります。(当時すでに絶版していた。)

詩人の銀色夏生さんが長い間あつめてきた「かわいいもの」を一冊にまとめたもの。自分がなにげなく見ている世界って、こんなにすてきなもので溢れていたんだ…と気づかせてくれます。添えられた手書きの短い詩とイラストがまた味わい深くてかわいい。私はとくに「きゅうりこぞう」のページが好きです。

そして、この本は装丁も素晴らしい。文庫本なのが小さな宝箱って感じだし、オールカラーだし、表紙は和紙っぽい少しざらっとした質感の紙で、すべてがこの本のもつかわいさと調和しているのです。

現状、電子では取り扱いがあるものの紙は絶版していますが、この本にかんしてはぜったいに紙で読んでほしいです。これから読む方にも小さな文庫本をひっそり開く胸の高鳴りを体験してほしい…復刊希望…

もしお棺に一冊入れてもらうとしたらこの本を選ぶし、なにかあったときはこれを持って逃げたい。私のお守り的存在です。